弊社が文化財修理を行う上で重きを置いていることは、次世代の育成と、古来より使用されてきた材料の選定です。弊社の糊室では、代々寝かした古糊を保管し、毎年大寒の時期にそれらの水替えを行い、今もなお作り続けております。
<表装に用いる和紙・裂について>
総裏に使用する和紙は奈良県宇陀産の宇陀紙を、生漉和紙に関しては、高知県産のいずれも手漉き和紙を使用しております。また使用用途に応じ、越前和紙や美濃紙、弊社工房内では、高知県立紙産業センターの指導のもと修理用補修紙の制作などもおこなっております。また、裏打ち用に使用する和紙は全て製造より5年以上または10年以上、十分に寝かしつけたものを使用しております。
掛軸における表装の役割は、西洋絵画における額縁以上に作品鑑賞上で大変重要です。表装の裂地は、織物の本場京都西陣にて依頼し、製作されたものを使用しております。また裂地に使用される旧文様の復元等も多数行っております。
弊社では、仏画や頂僧、祖師像、御名号といたものには本来の仏式表装で、その時代に沿った品格に合う裂を選定しています。さらに鎌倉や室町時代といった時代の古いものには別注で表装裂の古代色染めを行います。一般絵画や近代作品には、通常の表装裂だけでなくインド更紗や、ジャワ更紗などインドから中国・東南アジアの裂なども使用し、様々な表装スタイルを提案させて頂いております。